1998年7月14日(火)


今日、期末テストが終わった。
去年までは、テストが終わるとほっとした気分になり、開放感に満たされて自由を満喫したものだった。
しかしこの頃は、テスト中でもあまり勉強に力が入らなくなってきた。一夜漬けに頼らなくなってきた、といえば 聞こえはいいが、その実、テストの点数に対する執着心が弱くなってきたのかもしれない、と思う。
それでも、テスト返しの瞬間には、赤いペンで走り書きされた数字に一喜一憂するのを止められない。
このまま、来春まで学力が落ちないでいてくれれば、と願うのだが・・・

学校から帰ると、すでにいつもの時間−−6時間授業の日と同じ−−になっていた。
風呂に入り一息つく。今日は気温こそ低めだが、舗装道路に照りつける日光は真夏のそれだった。
さっぱりとした体で自室に入る。リモコンを操作すると、エアコンがピピッと反応を返してくる。
しばらくすると、快適空間が出来上がった。特にすることもないので、ベッドに転がり込む。
帰り道に買ってきたエマ本を開いて、1時間ほど読みふけったあと、目を閉じた。
不思議にも、「したい」という気持ちはわき起こらなかった。
何かおかしい、去年までなら、テスト後の午後は必ずしていたはずなのに・・・
僕の中で、何が変わったのだろう?
身体と心の内面が、自分の知らないところで刻々と変化しているのを感づくたびに恐ろしくなる。

結局、夜ベッドに入るまで、僕のあそこは使用されることがなかった。
午前0時。電気を消す。横たわった姿勢で、時計の「0時」を見るのは久しぶりだ。
いつもの習慣で、右手がパンツの中へとのびてゆく。
小さくかしこまっているそれを、何度かこねまわしてみる。身体的反応は確かに起こった。
しかし、それ以上のものがない。自分を行為へと走らせる何かがない・・・
まあ、別にしなきゃいけないというわけでもないか。
僕は納得し、右手を服の外へ逃がした。そして寝返りを1度うってから、静かな気持ちで目を閉じた。

変な夢を見る。はっとして目覚めると、時計は午前1時を、冷たい光で示していた。
27度に設定されたエアコンが、かすかな振動音をたてて動いている。
僕はスタンドの電気をつけた。部屋がぱっと明るくなる。続いて、いつものように脳が目覚めてゆく。
変な夢だった・・・決して、楽しい夢ではない。どちらかといえば見たくない夢・・・
このごろ、いや最近ずっと、僕は夢見に悩まされることが多いのだ。
子供の頃から、どちらかというと不気味な夢、怖い夢を多く見ていた僕のことだから、 それが特に自分の中の変化を表しているとは思わない。
しかし、こういう夢を見る自分の精神は、やはり病んでいるのではなかろうか。
自分の知らないところに植え付けられた潜在意識。それが自分の本質であるとするならば、 震え上がりそうなほど恐ろしいことだと思う。
藍色の闇を、皓々と照らし出す蛍光灯の光だけが、こんなときの自分を支えてくれる。
僕は不安を打ち消すため、ベッド脇の本棚から今日買ったエマ本を取りだした。
できるだけ、物質的な世界を思い出させてくれるものがいい・・・精神だとか、意識だとかを 忘れるためには、現実世界のマテリアリズムが一番の薬になる。
Windows98についての巻頭特集に目を通す。読んでいるうちに、心がだんだん平静さを取り戻してきた。
だが、このまま油断して寝れば、また同じような夢を見ることになるかもしれない。
そういう不安が、僕の指先にエッチなページをめくらせる。胸をあらわにした女のコのグラフィックが続く。
左手が、いつもの場所へ入ってゆく。そこはまだ、はっきりとした固さを帯びてはいなかった。
爪の先でその部分をゆっくり掻くと、次第に感じる部分が隆起してくる。いつもの感触が、僕の心に安らぎを与えてくれる。
円を描くように腰をくねらせる。股の付け根をベッドに押しつけ、圧迫感と摩擦感を求める。
それだけでは満足できなくて、パジャマのズボンを膝まで、するするとおろしてゆく。
エアコンがつくり出す適度な冷気に、熱くほてりはじめた場所がさらされる。
そのまま何度か腰を回すと、シーツとのあいだで先端が高熱を帯びてくる。
うつぶせの状態からあおむけになると、その部分は空間的な自由を得て反り返り、前後に何度か揺れた。
スタンドの光が、紅色になったその先端を影の中に目敏く映し出す。
僕は右手を添え、摩擦を始めた。段差の部分に、親指と人差し指で作った輪をはめこみ、上下に動かす。
目を閉じると、右手だけが身体の中で動いている場所となる。 イってしまわないように、茎の部分には手を触れない。ひたすら先端の肥大部分のみに触れていると、 じわじわと股の付け根が熱くなってゆく。何とも言えない、一種耐え難い媚熱、しびれとも表現できるかもしれない。
ともすると、手を休めてしまいそうになるが、そんなときには本に視線を投げかけ、再び上半身の急所に指を這わせる。
本の中には、女性のやわらかそうな胸に挟まれ、白いものをいっぱいに流して果てているシチュエーションがあった。
その女性の、物欲しそうな瞳、乳首に触れるか触れないかという指先を見ながら、僕は自分の硬いものを擦っていく。
最初のうちは、こすこすこすこす・・・という乾いた音が聞こえていたが、エッチな状況を思い浮かべ、 小さな突起を触っているうちに、にちゅにちゅ、というような音に変わってきた。
涼しい部屋の中だが、下半身だけはどうしても熱くなって、お尻からふきだす汗が シーツをじわっと湿らせているのがやや不快だ。
イかないように、イかないようにコントロールしながらこすっていると、だんだん興奮が冷めてきて、 立ち上がった部分をさらけ出したまま、眠ってしまいそうになることもある。
そんなときは数秒後に目が覚め、危ないなぁ、このまま眠ってしまったら・・・と考えながら パジャマの中に手を入れ、そこの上で指を何度か往復させてやれば、途端に目が覚め、また快感を貪り始める。
そのあと、少し気分が高まりすぎて、右手を止めるタイミングを逸してしまい、ぎりぎりで我慢したものの、 イクときの感じを小さくしたような、中から何か出てくるような快感に襲われた。
これが来ると、場合によっては射精することなく終わってしまうことさえある。
僕はもうイき時だなと思って、両乳首を左手でなでなで、亀頭を激しく上下に擦って、最後の快楽へと突進していった。
うっ、最後の一線を越えたとき、右手はあそこを足の方に向けて逆反りにする。
びゅっ・・・びゅ。
左足の太股と、右手の指になま暖かい感触がぼたっと落ちる。思ったより少ない量の精液だった。
ベッド横から、使用済みで黄色く固まったトイレットペーパーを取り出し、粘液をざっと拭き取る。
終わった後は、汗によって濡れたシーツが一段と気持ち悪い。
僕はパジャマをはき直した後、お尻の場所を横にずらしてから、電気を消した。

幸運にも、そのあと悪夢を見ることはなかった。





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