輝国山人の韓国映画
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▼紡織工場の音楽部の先生トンシクは,クムチョン(金泉)市で起きた殺人事件の記事に興味を見せる。
▼ある日,女工カク・ソニョンからラブレターをもらったトンシクは,この事実を工場寄宿舎の舎監に知らせて,ソニョンは,仕事を辞めることになる。
▼一方,ソニョンに手紙を書くようにそそのかした友だちのチョ・ギョンヒが,ピアノのレッスンを理由にトンシクの新築の家に出入りし始める。
▼新しい家を建てるために無理に裁縫仕事をした妻の身体が衰弱すると,トンシクは,キョンヒに頼んで下女を紹介してもらう。
▼妊娠した妻が実家に戻ったある日,キョンヒは,トンシクに愛を告白するが,侮辱にあって追い出される。これを窓の外でこっそりと見守っていた下女は,トンシクを誘惑して関係を結ぶ。
▼下女は妊娠をすることになって,この事実を知ることになった妻は,下女を説得して階段から転がり落ちて堕胎するようにさせる。
▼赤ん坊を失った下女は,ますます乱暴になり,結局,トンシク夫婦の息子チャンスンを階段から落として命を奪う。
▼下女が,このすべての事実を工場に知らせると脅迫すると,妻は,家と家族を守るためにトンシクを2階にある彼女の寝室に送る。
▼結局,トンシクは,下女とともに自殺するために猫いらずを食べるが,死んでいく下女を振り切って,妻のそばに戻って息をひきとる。
▼再び映画は,初めの場面の新聞記事を読むトンシクと妻の姿に戻る。トンシクは,観客に向かって,このことは誰にでも起こることだと話す。
通俗的な素材ではあるが,60年代映画にふさわしくない破格的で独創的な表現にあふれる作品
[制 作 年] 1960年 [韓国封切] 1960年11月3日 [観覧人員] メロドラマ,スリラー [原 題] 下女 하녀 [英 語 題] The Housemaid [原 作] [脚 本] キム・ギヨン(金綺泳) [監 督] キム・ギヨン(金綺泳) [第9作] [助 監 督] チョン・ウンジュ,キム・デヒ,チョン・ヒョソプ [撮 影] キム・ドクチン(金徳珍) [照 明] コ・ヘジン(高海振) [作曲指揮] ハン・サンギ(韓相基) [演 奏] 韓国映画音楽交響楽団 [美 術] パク・ソギン(朴石人) [出 演] キム・ジンギュ → キム・ドンシク 音楽部の先生 紡織工場 チュ・ズンニョ → イ・ジョンシム トンシクの妻 イ・ウンシム → オ・ミョンジャ 下女 オム・エンナン → チョ・ギョンヒ 女子工員 コ・ソネ → 舎監 カン・ソクチェ → ワン・スクラン → ラ・ジョンオク → アン・ソンギ → チャンスン トンシクの息子 イ・ユリ → エスン トンシクの足の不自由な娘 オク・キョンヒ → カク・ソニョン 女子工員 ナ・オクチュ → チョン・チョンヨン 女子工員 チェ・ナミョン → ユ・ジョンシク トンシクの先輩 チョ・ソックン → 運転手 ナム・バンチュン → テレビジョン技師 キム・マン → [受 賞] 1961 第2回 映画芸術賞(週間演芸新聞社,映画芸術社 主催) /監督賞,特別技術賞(キム・ドクチン) 1961 1960年度 韓国最優秀映画賞(公報部 主催) /最優秀監督賞,最優秀新人賞(イ・ウンシム),最優秀撮影賞 最優秀美術賞,最優秀編集賞(オ・ヨングン) [映 画 祭] 1961 第8回 東南アジア映画祭(フィリピン マニラ) 出品 [時 間] 110分 [観覧基準] 18歳未満 観覧不可 [制 作 者] キム・ギヨン(金綺泳) [制作会社] キム・ギヨン プロダクション [提 供] 韓国文芸映画株式会社 [ビ デ オ] 金綺泳(キム・ギヨン) 傑作選 BOX 販売元:IVC(20,000円+税)2020/12/25発売 [レンタル] なし [H P] [撮影場所] [You Tube] https://www.youtube.com/watch?v=O_p7xeYPdfo
[Private ] K-DVD【67】(3,500-2021/09/20) 韓国映像資料院 古典の再創造 シリーズ「下女」(DVD) ・音声解説 キム・ヨンジン(映画評論家),ポン・ジュノ(映画監督) ・復元前後の映像 ・イメージ資料集 金綺泳(キム・ギヨン) 傑作選 BOX 販売元 : IVC(2020年12月25日発売) Blu-ray 下女 玄界灘は知っている 高麗葬 DVD 水女 火女’82 死んでもいい経験(天使よ悪女になれ) 下女 金綺泳(キム・ギヨン)《スペシャルプライス》(Blu-ray 2,200円+税 DVD 1,500円+税)2025/1/31発売 J-Blu-ray-Rec(単独) KMDb(韓国映画データベース) NAVER [お ま け] ・キム・ギヨン監督は,その後,この映画と同じストーリーで<火女>(1971)と <火女’82>(1982)という作品を監督した。 ・オープニング・タイトルの文字デザインを手がけたのは、ポン・ジュノ監督の亡父 ポン・サンギュンで、文化映画専門のプロダクション「国立映画製作所」で美術室 長をしていたときの作品だそうです。 [連載]崔盛旭の『映画で学ぶ、韓国近現代史』 『パラサイト 半地下の家族』ポン・ジュノ監督が尊敬する“怪物” ――キム・ギヨンが『下女』で描いた「韓国社会の歪み」 https://www.cyzowoman.com/2020/12/post_318531_1.html ◎韓国映像資料院 古典の再創造 シリーズ「下女」(DVD) 添付 ブックレット から <下女>の誘惑は続く 〜 デジタル復元の現住所と課題 キム・ギホ(韓国映像資料院 保存技術センター研究員) ○デジタル復元の神話を破ること 理解への手助けのために,デジタル復元に対する映像資料院(Film Archive) としての立場をご説明することから始めたい。 一般的に'デジタル’という単語から,人々は,無限の拡張の可能性と自動 化技術が思い浮かぶ。 このような脈絡から‘デジタル復元’は,最も先んじたフィルム復元技術で あり,既存の伝統的な光学復元プロセスを完全に代えてしまうと思う人々が 多い。 だが,少なくとも古典映画フィルムの領域で,これは誤った神話だ。 デジタル復元の成功の可否は,ほとんど70%以上が,原本フィルムの毀損 の程度,そして熟練したフィルム保存専門家たちの事前の保守作業にかかっ ているためだ。 すなわち,デジタル復元は,アナログ復元から多くの部分で自由でない。 その上,デジタル復元装備の自動化アルゴリズムもまた,韓国古典映画フィ ルムの途方もない毀損度と無作為性の前では,その威力を全部発揮できない。 1974年から韓国映像資料院で収集,保存する前まで,日常環境に露出し ていた韓国古典映画フィルムの毀損状態は,海外フィルムの平均水準と比較 できない程にひどく,海外に参考事例がない特殊な状況が多く,資料院では, このような場合'特殊復元’と別に指し称したりもする。 したがって,長時間の強力な作業の中で作業者が体験する苦衷は,到底話し 尽くせないほどであり,また,多くの費用が必要とされるので,年間作業可 能本数に制限が存在するしかない。 ○古典映画フィルムの復元というのは 韓国映像資料院は,古典映画フィルムを原本そのまま保存・再現して次世代 にも見ることができるようにする任務を受け持つ機関だ。 ところで,この'原本’という概念は,現在の観客が望む,いわゆる'きれい で鮮明な映画’とは距離がある。 資料院のデジタル復元作を鑑賞された観客の方々から,復元をしてないので はないかという質問を受ける時がたびたびある。 それもそのはず,これ以上復元すると原本が変形してしまうという判断が入 る所は,'放っておくことが原則’であるためだ。 同世代人になめらかな画面をリリースするために,創作者の汗がしみこんだ 作品を変形することは,アーカイブの倫理に背くことだ。 事実,このような観点で古典映画の原本状態を最も再現できる理想的な方法 は,アイロニーにも最新デジタルプロセスでなく,伝統的な光学復元によっ てフィルムからフィルムへ直接複製することだ。 フィルムは,基本的に光と化学作用の連続データを入れた媒体であるから, 厳密に話せば,微細なサンプリングによってデジタル化する瞬間,すでに原 本データの損失が発生している。 損失圧縮でも,無損失圧縮でも,LP版をデジタルファイルに変換した時に は,すでに原本と差が発生するのと同じ論理だ。 もちろん,後半作業過程でどうせ中間デジタル色補正(DI,Digital Intermediate作業)を経るこの頃の大多数の映画は論外としなければならな いが,フィルムが原本媒体である古典映画の立場から見れば,デジタルプロ セスが無条件でできるものではない。 デジタル復元が意味があるのは,既存方式によって復元が不可能な場合,あ るいは,原本自らの毀損が激しくて正常な観覧に困難がある場合であり,こ の時,デジタル復元によって再誕生した作品は,本来の姿に近づいたと自信 ありげに話をできるはずだ。 <下女>をはじめ韓国映像資料院が今まで作業したデジタル復元作業は,全 部そのような動機で進行された。 ○<下女>の胎生的障害要因 韓国映像資料院は,2007年に国内最初に韓国古典劇映画のデジタル全編 復元に成功した後,古典映画フィルムのデジタル復元事業を進めてきたし, <下女>は,その4番目の作品として,マーティン・スコセッシ監督が導く 世界映画財団(WCF,World Cinema Foundation)の支援で復元された。 毎作品ごとに全く違う問題点とぶつかって試行錯誤を経てきたが,<下女> の場合は,もう少し複雑だった。それは,<下女>のフィルムにからまった 複雑な履歴のためだ。 最初に資料院に収集された原本ネガフィルムは,合計10本中2本(約20 分の分量)がない不完全本だった。 後に資料院が保有している英文字幕プリントフィルムからネガを復元して欠 損の部分を満たすことになったが,そうするうちに既存のデジタル復元作業 で経験できなかったいくつかの問題が発生することになる。 ○字幕の除去と復元 まず,プリントフィルムから移してきた20分余りの分量の英文字幕に対す る処理問題がある。 過去には,海外輸出あるいは国際映画祭への出品のために英文字幕を制作す る時,別名「筆耕士」たちが,手で直接書き込んだという。 どうしても,1mm四方以内の区域に人手で字を書いて見たら,字体に一貫性 がなかったし,大きさも大きかった。 <下女>の場合には,ひどい場合,画面の1/3から半分程度を3行の字幕 が覆う場合もあったし,さらには,字幕が左右に揺れて,フレーム別で微細 にこわれた部分もあって,鑑賞の邪魔になる水準だった。 これに対し,世界映画財団では,復元支援の前提条件の中の一つとして字幕 除去に言及した。 字幕除去作業は,一見,画面のホコリ,スクラッチなどを消す一般的なデジ タル復元作業と同じ概念だと考えることができるが,微細な振動と色感変化, 枠の不明さなどにより,一般復元装備では作業が不可能な全く違うケースだ。 あえて関連させようとするならば,字の各画をいちいち手で消さなければな らない作業の概念にかえって近いので,既存の人材と予算では不可能な作業 だった(そのような理由で,海外にも公式に発表された類似事例がない)。 この作業のための専用復元ソリューションを研究開発して現場に投じること が唯一の方法だったが,時間がとても不足したし,成功の可能性まで希薄な 高難易度のプロジェクトであった。 結局,韓国文化コンテンツ振興院(現:韓国コンテンツ振興院)の文化技術 開発支援事業として予算が支援されて産学研プロジェクトを推進したし,刻 苦の努力のはてに字幕復元ソリューションMJW1.0の開発に成功して字 幕を除去することができた。 毀損が進行中の古典映画フィルムの不確定性を全部分析できるアルゴリズム の研究は,現時点では不可能だ。 それで,字幕が消された部分は,チラチラしたり,モウモウと残ったりして 輪郭線がこわれる副作用があって,これさえも100%自動化の道は,はる かに遠い状況だ(本DVDに収録された画面復元前後比較映像を参考にされ たい。)。 しかし,持続的な研究でより一層多くの例外状況を処理できるソリューショ ンで改善していくならば,より自信ありげに韓国の「復元」ソリューション だと話すことができる日が来るだろうと信じる(これと別個に,果たして字 幕を除去することが,「復元」の立場として穏当な判断なのかは,また別の 議論だ。)。 ○異種原本間の異質感についての悩み <下女>の復元で,その次に困惑した点は,プリントから復元したデュープ ネガ部分と残りの復元ネガフィルムの部分の異質感を埋める問題であった。 フィルムは,複写世代を繰り返すほど品質が落ちる媒体であるから,プリン トフィルムからもう一度復元を経たネガフィルムの画質が,原本ネガと明確 に違いが生じるのは当然だ。 さらに,<下女>は,プリントフィルムの毀損状態が非常に良くなかった反 面,原本ネガフィルムの状態はかえって比較的良好な方だったので(しかし, 海外古典映画フィルムの平均水準よりは相変らず良くない),体感される品 質の差がより一層大きかったのだ。 デジタル復元というのは,基本的に,他のフレーム,あるいは同じフレーム の他の部分の情報を参照して不足した部分を満たして入れる作業であるから, 初めから情報が希薄なソースを持ってすることができる作業には,限界があ る。 色補正の領域では,原本従属性がより一層深刻化されるのに,この差異は, ほとんど克服することが難しいと見られる。 結局,状態が激しい部分は,他のフィルム本から部分を代替して色感差は, 可能な部分まで合わせることで進めなければならなかった。 これは,デジタル復元で原本の状態がどれくらい絶対的かを実感できる良い 機会であった。 ○今後の課題 もう一つのイシューは,音響復元に関することだ。 原本音響から雑音を除去する過程で,既に内在していたノイズがあらわれた り,環境音まで削られていく場合がある。 これは,一般的には大きく現れず,ただし音が詰まった感じでよく聞こえな い感じ,あるいは,高音域帯の響き現象程度に感じられるが,シネマテーク KPFA1館では,もう少し明確に確認することができる。 古典映画の音響は,最近の制作環境と違い,ミキシング前の音源が残ってお らず,声優の録音段階ですでにこわれて入った場合が多く,復元時に格別の 注意を要する。 <下女>の場合には,結局,原本の毀損がない範囲内で最大限フィルタリン グと手作業を併行して,上記の副作用なしに復元を完了したが,それだけに ノイズは残っている。 長期的に見た時,音響復元は,私たちが切り開かなければならないまた別の 領域という気がする。 視知覚より聴知覚がはるかに鋭敏なので,音響復元は,画面復元よりはるか に難しいと予想される。 もちろんこれは,あくまでも古典映画の音響であるためだ。 古典映画の毀損原因が各々なので,その形態や様相も多様で,単純な類型分 類が可能な性格でない。 それだけ,そのそれぞれのケースに該当する復元技術研究が必要で,実際に 海外でも場合により合うソリューションを開発して適用している。 故に,古典映画の復元は,いつも莫大な予算と十分な時間を必要とする。 この瞬間にもフィルムは老いていっている。 それだけ私たちは,休まないで学びながら走らなければならない義務がある。 ○有難い人々 <下女>の復元を快く承諾された著作者キム・ドンウォン先生(故キム・ギ ヨン監督様の息子),復元に惜しみなく支援をされたマーティン・スコセッ シ議長をはじめとする世界映画財団の関係者たち,難しい状況の中でも愛情 を持って作業したHFR(株)のチェ・ジョンムン チーム長様以下,復元 チーム員のみなさん(現AzWorks),そして,不可能に見えた復元ソリュー ション研究を成功裏に進行したHFR(株)のハン・ビョンヒ チーム長様 以下,開発チームのみなさん,およびソウル大学チョ・ナミク教授様と情報 信号処理研究所の研究員の皆さんに紙面を借りて深い感謝を申し上げる。