子連れで覗いたマニラ(5)
〜路上の風景〜


ストリートチルドレンに会う目的、どうなったと思いますか。子ども達の目には、何が映ったのでしょう。治安の悪さ、貧困、退廃というイメージが真っ先に浮かぶマニラ。もちろん首都マニラと言っても、とても広く、マカティという高級住宅地・高級商業地もあれば、計画都市として整備されたケソン市のように、清潔で整然とした街もあります。私達が迷うことなく選んだ滞在地は、一番猥雑な地区、エルミタ。それは、ストリートチルドレンに会うためでもあったのです。

エルミタは、旅行者にとって何でも揃う便利な街です。しかし、だからこそ、スリ、詐欺、窃盗、というような犯罪の発生率も高い地域でもあります。詐欺を企み“チェンジマネー”と寄ってくる男。どこにでも見かける大型銃を持った警備員。車は、もの凄い排気ガスと騒音をばらまき、その横の穴ボコ歩道で、タバコ、ガム、花、髪留めを売る女性や子供。そんな風景のかたわら、突如として、巨大ショッピングセンターがそびえ立つ。中は日本と変わらない。いやもっとあか抜けている。おしゃれな若い人、家族と、最新かつ高級の品々。コンビニやファーストフードショップがあふれる中、廃墟となったビル、路上の片隅で寝る人々・・も垣間見る街、それがエルミタ。

交通のシステムには右往左往させられました。例えば、3ペソ程度(約8円)で乗ることができるジプニー(乗合バス)は、乗りたいところで乗れて、降りたいところで降ろしてくれる、便利な乗り物。しかし、道路がひとクセあるんです。
それは、町の中心の通りが“一方通行”ばかりなのです。狭いからではありません。ちゃんと2台並んで通れるのに、そう。具体的に言うと、マビニ通りは北へ行く、デル・ピラール通りは南へ行く、と。マビニ通りにいては南行きのジプニーには乗れないのです。地図に矢印がついていればいいのにー!。よそ者は、失敗を繰り返して覚えるしかないのでしょう。“交通の方向”と反対に行きたければ、ジプニーをあきらめて歩くか、反対の流れの道まで歩き遠回りのジプニーに乗るか。どっちにしろ、モーレツな暑さの中を歩くわけですが、どっちが近いかと、一考するんですねー。で、はずれたときのショックは大きい!
 一方、大通りになると何車線もあって、一見普通。しかし、横切りたいなーと思ったとき気づくんです。交差点がない、ことに。正確に言うと、交差点と交差点との間隔が、やたらあいているんです。交差点がなければ、信号もない。交通の流れが止まらければ、ああ、渡れない!で立ち往生。
  まあ、そんなこんなを繰り返しながら、だんだんと体が覚えてくれたようですが、慣れない間、たくさん助けてもらいました。人の優しさが身に浸みて、人に支えられて生きているコトを痛感する・・、このために旅をしてるようなもの?です。

 さて、マニラには何十万人ものストリートチルドレンがいるそうです。何度か、それらしき子ども、またグループを見かけました。ですが、私達は、誰からも、一度も、近づくことも、乞われることもなかったのです。彼らに渡そうと、日本から持ってきていたボールペンは、その機会を得ることができませんでした。
エルミタの北、チャイナタウンの東にはトレドという大きなスラムがあります。チャイナタウンを見て回ったとき、トタン屋根の今にも壊れそうなバラックの集落が見えました。汚れた川で生活している光景も見えました。あの場所に行けば会えた・・のです。しかし、現地の人の案内なしに、無用な立ち入りすることは厳禁、と言われているその場所に、入る勇気も、機会もありませんでした。
そのことは、帰国後の私に、ストリートチルドレンのことを知りたい、という気持ちを大きく掻き立てました。
ーなぜ、彼らは私達に寄って乞わなかったのか。
インターネットのホームページにもたくさんの情報が載っていました。家族の崩壊、虐待、家出、極限の生活、売春、病気・・。胸がしめつけられる現実を・・知りました。   (次はマニラ郊外に続く)

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