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The list of all Japanese Rush articles

Guitar Magazine Dec. 1984

Interview with Alex Lifeson by Jas Obrecht

(transrated from Guitar Player)

 
 

自ら語る『グレイス・アンダー・プレッシャー』でのギター・プレイ。

以下 Alex による解説

『グレイス・アンダー・プレッシャー』は、今までで最高に満足した仕上がりなんだ。いつものとおり、1カ月くらいたってから客観的に聴き直してみると、もちろん2、3反省点はあるものの、とても気に入っている。
 レコードになるまでは、プレイをかなりやり直している。力の限り早弾きするなんて事はしない。そんなの無意味だし、自分で弾いてても、人のを聴いても楽しめない。いい例がエディ・ヴァン・ヘイレン。彼がどんなにすぐれたギタリストであるかは、とても言葉では言い表せないほどだけど、レコードで全編あのイナズマ・プレイで押しまくられると、ちょっともう‥‥という感じになる。凄いんだけど、それほど長く残るものじゃないと思う。魂をつかむような音、ハーモニックでメロディックなソロ・パッセージなんかは、本当に感動的で永遠のものなんだ。僕のソロの中には、普通のブルース・ロック・スケールの枠をはるかに超えたものもある。それが何よりの特徴だろう。ソロはいつも即興だ。だから明日はソロの日、と決まったら、スタジオに入ってセッティングし、ただソロを弾くんだ。2日かけることもある。何時間もたつうちにわけがわからなくなってきたらちょっと休むと、またそこから新しいアイディアがパッとひらめく。いくつものソロのいいところをとってつなげることもある。つなげたらその線でもう一度弾き直してみるか、つながりが自然ならそのまま使うかする。

Side A 1 「彼方なる叡知が教えるもの」

では、曲ごとにギター・サウンドを説明しよう。まず「彼方なる叡知が教えるもの」では、我々が“水兵のパート”と名付けた部分のソロはまったく2重、3重にしていない。“酔っぱらった水兵をどうしようか”という冗談があったんだ。あれはギター1台だけで弾いたのを、デルタラボ・ハーモニー・コンピュータで1オクターブ上げたんだ。ああいうラインのピッキングには、特徴を出すためアップ・アンド・ダウン・ストロークを用いてる。

Side B 2 「アフターイメージ」

「アフターイメージ」のメロディックなライン、ゲディが "I feel the way you would" と歌った後のところには、何も特別なものは使っていない。コンプレッションのかかった大きい、エコーたっぷりのホットなサウンドをそのまま使ったはずだ。その後にミュートしたピッキングの部分が続く。ダウン・ストロークで、手のひらの横でミュートした。キーボード・ソロの前にくるとボリュームが急に上がる。あの天に抜けるようなサウンドは全部 PPG (2.2 ゲディが弾いている)だ。ここではギターはコードだけ。ソロにコードを使ったのは、変わったアプローチをとってみたかったということと、コードから新しい価値をひきだそうとしたからなんだ。自分では結構うまくいったと思っている。コードが最後にうまくめろでぃっくなラインに溶け込むコンビネーションがいいんだ。
 「アフターイメージ」は、交通事故で亡くなった我々の親友の話だ。彼の人生を祝福したかったんだが、曲のもの悲しさがギター・ソロにも表れている。この曲を弾く度に彼のことを考える。彼はル・スタジオで働いていたから、我々はちょうどその場でレコーディングしていたわけだ。灯りを少し暗くして、感傷的になりながら気持ちを高めていった。ソロのところで何度涙を流したかわからない。真ん中へんでどうにもならないくらい悲しくなって演奏がずれてしまい、テープを巻き戻してやり直したりさえした。“(涙声で)もう一度やろう”って‥‥。「ビトゥイン・ザ・ホイールズ」のソロもそうだった。詞に感情移入した。正気を求める叫びだ。

Side A 3 「レッド・セクターA」

「レッド・セクターA」の初めのコードではアームを使った。チューニングを保つ上での問題はまったくなかった。フロイド・ローズのファイン・チューナーのついていない初期のテイルピースで、シャークのネックをつけた時、ロックしないことにしたのだ。黒のストラトには何の問題もない。白いのも、まず、ほとんどないと言っていい。弦のかかる溝にそってグラファイトがついているので大丈夫、ロックする必要は感じない。曲の最後のフル・コードは、手のひらの横でミュートしている。ソロで使ったハーモニックスはスタンダード・チューニングで、それにハーモニー・コンピュータをセブンスにセットしてかけている。これで奇妙な、東洋的な効果が出せた。僕と同様皆も関心を持つらしく、よく“いったい何であんな風にしたんだい?どうやったらあの音が作れるのかな?”ときかれる。しかしライン自体はシンプルだ。

Side A 4 「内なる敵へ」

「内なる敵へ」はベースがにぎやかにはね回っているので、ギターは控えめにした。最初のインストゥルメンタル・ブレイク、つまりゲディが "Experience to extremes" と歌った後はギターを半分に分けて、低音部と高いハーモニー・ラインを弾いている。黒のストラトキャスターで素早く上下にストロークして、あのバラライカのような効果を出してみた。
 この曲の最後の方の高音では、コードを弾きながら右手の小指でいろいろな音程を叩き出したものだ。Bm, G, A, Bm と進行する。だからまず Bm を弾き、3フレット(バレー)で G を弾きながら、右手の小指を使って15フレットのところで全弦を叩く。それから A を(バレーで)弾きながら17フレットを叩く。つまりフィンガリングしているコードの12フレット上を叩いてハーモニックスを出せば、あのちらちら感じになるんだ。ゲッド(ゲディ・リー)が後ろでキーボードを入れてなぞってくれたのをかすかにミックスしているが、中心になっているのはギターのハーモニックスだ。それ以上の変わったプロセシングなどは一切していない。

Side B 1 「ボディ・エレクトリック」

「ボディ・エレクトリック」の時には、欲求不満で怒り狂った。何を試してみても方向が見いだせなかったんだ。ひとつのことに何時間もかけた末に、“しょーもない。今まで何時間もかけてきたことと同じじゃないか”ということになるんだ。そのたびにギターを置き、新しいとっかかりを求めてホッケーの試合を観に出かけたりしてた。帰ってくると“これだ、ワイルドにやってやるぞ”という気分になった。すると突然皆が僕の方をみて“おい!そりゃなんだ?”と言いだしたんだ。確かにテープを聴き返してみたらとてもおかしくて、それからひらめきがあったんだ。とにかくクレイジーでおかしくて、僕の人格を超えていた。でもそこからはとんとん拍子に進み、ソロ全体が40分くらいで仕上がった。
 あのソロではアームを使っている。ここのところ、使いすぎるくらいに使ってるんだ。それにつれて左手がなまけてきたのに気づいたね。ずっとビブラートでやってたのに、すっかりなまってしまった。アームを使う方が簡単だし、いいビブラートが出せるからだ。手で出すビブラートは上と後ろというより、上と下という感じだ。

Side B 2 「キッド・グラブス」

「キッド・グラブス」のリズム・ギターはストラトとテレキャスターのダブル・トラックだ。コーラスは片方にしかかけなかった。ベーシックなリズム・ギターはキーボード・シンセサイザーの前に録った。ソロのハーモニックスはピックを指に押しこむようにして出した。これは最後にやったソロで、とても難しかった。全部スタジオで作ったが、最初の音を弾くともう、“これから一体どーすりゃいいんだ?”と悩むばかり。「ビトゥイン・ザ・ホイールズ」のように、ソロに突っこむきっかけがない。ここでは“ほら、君の番だ、やれっ!”と突然放り出される。それだけに凄く挑戦しがいがあった。ずっとかかりきりで、もう発狂寸前だった。こういう風に、何かひとつをとにかくとことんやらなきゃならない状況に追いつめられたら誰だって狂うよ。ともかく、ソロの各部分が次につながっていった。何度も最初から弾き直しては、その度に少しずつつけ足していったんだ。そして最終的にはうまくまとまった。それをワン・テイクのソロにつなぎ直した。つまりこま切れに作ったものを、ひとつながりで演奏したわけだ。この曲にも、「内なる敵へ」で使ったようなちらちらするコードが入っている。こうしてこの曲には何日かを費やした。

Side B 3 「赤色の映像」

「赤色の映像」の最初のコードには、かすかにアームのエフェクトがかかっている。小指と薬指の間でアームをすべらせて前後に動かしているのだ。この曲で僕が最大に貢献しているのはベース・ペダルのラインだ。ふざけた音だろう。最初はバカみたいだと思ったけれど、いい感じにきまったね。ニールがドラム・パターンを思いつき、ゲッドは PPG でコードを出した。ウォーキング・ベースはベース・ギター・タイプのラインになっている。そして曲想が次々にに変わる。我々みたいにしょっちゅう9拍子をやっているグループは少ないと思うけれど、我々にとってはやっててとても楽しいんだ。

Side B 4 「ビトゥイン・ザ・ホイールズ」

「ビトゥイン・ザ・ホイールズ」では6弦の E を D まで下げたチューニングで、ロー・コードを弾いている。弦がゆるやかに振動するのもある種の効果を出している。最初キーボードで、次にギターが大体同じコードで入っていくが、このコードの種類はよくわからない。エコーをたくさんかけた上に、フェイザー、コーラス、MXR の“ラ‥‥ァ‥”と一緒になったディストーションを加えた。それ以外のラインではディストーションとフェイザーは切った。ソロの盛り上がったところのハーモニックスは普通のやり方、左手で5フレットと7フレットに触れて出している。ソロの最後の方のハーモニックスは、ピックを指の近くに埋めるようにして出した。このソロがアルバムの中でいちばんありふれているかもしれないが、キーボードや歌が元気にやっているところで弾くと感情もこめられて、とても楽しい。このソロをやる時は、主題を心の中に描いていた。

このアルバムは、仕上げるまでに何年もかかったような気がする。11月の初めから84年の3月12日までかかりきりだった。月曜日にスタジオ入りしてその週の土曜日に1度休んだきり、クリスマスの10日間を除いて休みなしでね。その期間中ずっと、3人の頭はアルバムのことだけでいっぱいだったよ。ベーシック・トラックに2カ月もかかってしまったのは、どう考えても謎だ。いつもの2倍くらい時間をかけて作曲、リハーサル、アレンジ、修正をくり返し、準備は十分にしたはずなんだ。みんな5日くらいで終わると信じてた。しかもスタジオ入りしてから身動きがとれなくなったり、思わぬ壁にぶつかったわけでもない。ただ欲しいサウンドを得るのに時間がかかったんだ。毎日大抵午後2時から始めて朝の2時か3時ごろまでやっていた。それでも毎朝11時には起きてたよ。9時から真夜中あたりが、みんながいちばんのってくる時間帯だったね。
 このアルバムの曲をステージでやるのに苦労することはあまりない。というのも、レコーディングの時点で、我々はトリオだという事実をしっかり頭に入れてやっているからだ。ステージで再現できないことをやるな、というのが我々の大原則なんだ。ギター・ソロのところにリズム・ギターを入れる誘惑にかられることも少なくない。リズムとリードのインターアクションがいいからなんだけれど、それをやってしまうと純粋なトリオ・サウンドとは言えなくなってしまうからやらないんだ。まあ今回は初めてその枠をちょっと超えて、キーボードの多重録音とか、ライブでは絶対できないこともやったんだけど‥‥でもショーでは必ずその雰囲気を出してみせるよ。PPG は素晴らしいキーボード・シンセサイザーだし、ゲディはそれをいかにも彼らしく使いこなしている。信じられないような音を作り出して、多重録音したところの感じを再現する。それに僕は、かつて自分がコンサートに行って、お目当てのギタリストがレコードと同じソロをやってくれなかった時の気持ちが忘れられない。“僕がいちばん気に入ってるソロなのに‥‥ひどい奴だ”とがっかりしたものさ。だから僕はいつも、レコードの感じからかけ離れたソロはやらないように気をつけているんだ。

 
 
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