勝手にレビュー


The Johansson Brothers


Anders Johansson Drums
Jens Johansson Keyboards
Marcel Jacob Bass
Leif Sundin Vocals
Benny Jansson Guitars



 このアルバムって、なんだか忘れ去られていませんか?

 Johansson 兄弟といえば、もはやジャズロック・ファンであれば聴かないわけにはいかないアーティストになっていますね。個人的には Yingwie's Rising Force にはいろいろと思い出があるので、かなり以前から接しているアーティストのひとつです。

 もともと Silver Mountain でもクラシカルな、テクニカル・キーボーディストとして注目を集めていた Jens ですが、なんといってもその強烈なシンセ・ソロが爆発したのは Trilogy 以降でしょう。
 それまでハープシコードの音色主体だった彼のソロパートは、それ以降ギタリストを駆逐する方向へと進んでいきます。この彼独特の、細いくせに妙に存在感のある音色は KORG Poly-6 により出されています。このシンセ、国産の Prophet などといわれていますが、オシレーターをシンクさせてだすモノ・リード音は独特の味があります。
 とにかく、〜Oddesey までの、一時期最速の名を恣にした Yngwie との競演により、Jens はディミニッシュ・マイナー(もしくはコンビネーション・ディミニッシュ)のシンセ・ソロで一躍メタル・キーボーディスト界のスターとなります。
 しかし、彼は「ツアーの連続に耐えられない」との理由から Yngwie のもとから離れます(その後 Anders も Yngwie バンドを去る)。
 そして皆が彼の存在を忘れた頃、実は彼は同郷の異才ベーシスト、Jonas Helborg と行動を共にしていたことが明らかになります。NY や、スウェーデンの小さなクラブで実験的な演奏と、聴きやすさをミックスした独自の音楽を展開していました。この頃は決してキーボーディスト(シンセ・プレイヤー)にこだわらず、パーカッショニストなどもやっていたようです。
 その間に、Jonas の多くのアルバムに参加します。その多くで聴かれる Jens の演奏は、まったく Rising Force 時代を感じさせない、もっとコンテンポラリーなものでした。ハモンドのパーカッシヴな演奏(といっても、John Load とは異なる)も、この時期に会得したのでしょうか。
 また、Jonas の人脈からか、Dead Line のアルバムにも参加しています。
 そして、おそらくこれらのディシプリンの集大成と思われるソロ・アルバムをリリースします。「飛べない創造物/ FJADERLOSA TVAFOTINGAR」です。キーボード・トリオで展開する”爆発しないパッション”(私が勝手にそう呼んでいます)はもはや孤高の位置に達したといっても過言ではないでしょう。
 しかし、(このアルバムをいきなり聴いた)メタル・リスナーからは拒否反応がでたようです。某 B! 誌では驚異の35点(笑)をつけていました。もちろん、メタルのアルバムとしての点数、と断っていましたが。
 そこで、メタルの良質な市場(カモ、ともいう(笑))である、日本での不評を知ってか知らずか、次に出したアルバムがこの "The Johansson Brothers" です(やっと戻ってきた)。

 歌ものが多いです。歌っているのは、MSG に引き抜かれた Leif Sundin で、声に張りのあるジョーリンの様です。ハモンドに合います。
 歌ものは全体的に70年代のテイストたっぷりのブルージーな曲ですが、、すべての曲で Jans のハイ・テンション・キーボードが主張しています。主役です。 Anders のドラムも、押さえるところは押さえ、暴走するところでは暴走しています。わかってるよ、この人たち。
 しかし、なんといっても聴きどころは長尺を含む3曲のインストでしょう。「飛べない創造物」での驚異的な演奏に加え、おぼえやすい曲展開やメタルらしいお約束なアレンジなどを盛り込み、非常にドラマティックかつハイ・テンションなバトルになっています。
 メタルがいけるプログレ・リスナーにも感動してもらえるのではないでしょうか。

 それにしても、このアルバムって、なんだか忘れ去られていませんか?


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