3Dヒゲオヤジ

■銀河少年隊■

DVDが普及したおかげで最近は昔の作品なども続々と発掘されて,長い間ソフト化を待っていたファンたちにとってはありがたい時代になった。おかげで財布の方は軽くなる一方だが,これはまあ個人の意思の力で折り合いをつけるほかない。

NHKの人形劇シリーズの中からSF作品を集めた「空中都市008/竹田人形座の世界」もそんなタイトルのひとつである。メインは表題作だが,他に「宇宙船シリカ」,「銀河少年隊」,それに竹田人形座関連のドキュメンタリーを収めた懐かしくもうれしい1枚だ。

その中で今回,個人的に最も印象的だったのが「銀河少年隊」である。このタイトルにピピッと反応する人はもう40代以上の世代だと思うが,僕にしても内容はろくに覚えていない。もしかしたら裏番組を見ていたのかもしれない。ただ冨田勲作曲のテーマソングだけはちゃんと記憶どおりで,あらためて子供のころの音楽の刷り込みって大きいなと実感した。

収録されているのは第67回「月の廃墟」というエピソードなんだけど,これが意外とテンポがよく,おまけにセリフや展開が思った以上にモダンで質が高いのだ。今どきの作品に慣れていると古い作品は妙に間が悪く感じられるものだが,ここでは話の展開に現代の演出に近いリズムがある。

だから主人公の危機で「つづく」と来ると「わあっ,続きも見せてくれ〜」と言いたくなるくらいまともに楽しんでしまった。ちなみにおよそ40年前の作品だ。

これは手塚治虫の原案,キャラクターデザインという珍しい人形劇(マリオネット)である。人物の芝居部分は人形で,車やロケット,遠景などはアニメという変わり種だ。で,手塚作品ではキャラクターのスターシステムが有名で,それぞれのキャラクターが作品ごとにいろんな役を演じている。この作品でも手塚ワールドの人気俳優のひとり,ヒゲオヤジが登場するのだが,当然のことながら"人形のヒゲオヤジ"である。つまり立体ヒゲオヤジだ。

その人形デザインがとってもよくできていて思わず笑ってしまった。「わははは,ヒゲオヤジだ,ヒゲオヤジだ〜」ってな感じ。もう誰が見てもヒゲオヤジと分かる造形で,眉毛の動きなんかかわいいぞ。

DVDではとりあえず「銀河少年隊」のパート全部と言っておこう。映像は古いし海外版なのでフランス語字幕がじゃまだが,思っていた以上に面白かったのでよしとする。クラシックSFの香りがちゃんと漂っていて"オニールの橋"なんて言葉を久々に聞かせてくれた。なるほどそういう時代の作品だったか。

空中都市008/竹田人形座の世界 ASHB-1117
発売元(株)アミューズソフト販売