ウラジミール・ナボコフの小説「ロリータ」は読んだことがなくとも,そこから生まれたロリコン−ロリータ・コンプレックスという言葉は誰でも知っている。今使われているロリコンの意味はだいぶ原作のおもむきとは違うが,とにかく我が国でもっとも有名な女性名のひとつであることは間違いない。ま,それが少女の名だと知らずに使っている人は少なくないだろうが。
さてその「ロリータ」はかのスタンリー・キューブリック監督の手により映画化されている。61年だったか?モノクロの2時間半以上の長尺である。男の手が少女の足にていねいにペディキュアを施していくなかなかインパクトのあるオープニングで幕を開け,いきなり物語終局から始まるという異色作である。解説によると原作者自身が脚本を担当しているらしい。
僕は中学生になったばかりのころテレビの深夜映画でこれを見た。非常にドキドキしながら親の目を盗んで見たそれは,期待したようなエッチな代物ではなく(当然か)実のところ「よくわからんかった」というのが唯一の感想,という映画だった。今となっては遠い目をしてフッとひとり苦笑するしかないね〜,
ただ,数千人の候補者の中から選ばれたというロリータ役のスー・リオンという娘,彼女の小悪魔的な美貌が印象に残ったことは確かである。
とりあえずサイド1の20分45秒あたりを見てみよう。フラフープに興じるロリータの姿に目を細める中年男(後に破滅していく主人公だ)の表情がいいな。ははは。原作ではローティーンの少女であるロリータは映画ではハイスクールの娘になっており,今見るとロリコンの言葉のイメージからはほど遠い「お姉さん」である。ちなみに彼女のフルネームは Lolita Haze である。雑学雑学。
この中年男(大学のセンセーでロリータの家に下宿しているのだ)が日記をつけているくだりがある。
私を狂気に追いやるのは小妖精の二重性格だ
夢みるあどけなさと一種異様な俗悪さが同居する
日記は危険だが,スリルもある。私の文字は誰にも読めまい
なぜかこの男の気持ちがよくわかる僕はやはり中年だ。ロリータことスー・リオンはこの作品の後鳴かず飛ばずで,結局悲惨な末路をたどった。合掌。
ロリータ SF088-5012
発売元(株)レーザーディスク/パイオニア