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The list of all Japanese Rush articlesRhythm & Drums Magazine Oct. 1984Interview with Neil Peart by Scott K.Fish[翻訳:高橋佳代子] |
----ニール、君はロック界のマーク・トウェインだね。「トム・ソーヤー」という曲もあるし、アルバム『シグナルズ』では、ハックルベリー・フィンみたいなキャラクターをよく描いているだろう。 ニール: たしかにそうだね。僕と関わりが深いからだ。僕自身、彼らと似たような環境で育ったからね。郊外の家に住み、夏には農場を持っている親戚のところへ遊びに行ったり。それに30年間生きてきて少しは賢くなったけど、僕の人生の見通しっていつも単純だし、昔と同じような事で喜んだりしているんだ。だから有名になることなんて僕にはぜんぜん興味がない。ドラムスや旅は大好きだけど、それをとりまくものは今だに苦手なんだ。 ----なるほど、そうすると音楽をとるか、好きな文学をとるか選択するようなことはなかったかい? ニール: それに直面することが多くなったね。詞を書き始めたのは偶然だったんだけど、ラッシュの前のドラマーが詞を全部書いてて、他のメンバーはあまり関心がなかったんだ。そこに僕が入って、ちょうど興味もあったんでやってみることにしたわけ。しかも彼らは僕の詞をとても気に入ってくれたし、楽しく充実した役目だ。 ----そういった時期がきたら、どんな事を書いてみたい? ニール: ミュージシャンについてだ。優れた作家達が書いたものをみると、彼らがミュージシャンでなかったために基本的なことが理解されてないんだ。だから、高校のダンス・パーティーに出てる若いバンドとか、超大物たちのツアーのこととか文学的鑑賞に堪えるものを書いてみたい。 ----ところで、君の詞の多くは、作家アイン・ランドに触発されたものだって言われているけど‥‥‥。 ニール: まあ、そう言ってしまえば簡単だけどね。でも巷で言われているほど彼女に傾倒しているわけじゃない。『西暦2112年』は作っているうちに偶然彼女のある作品に似てきたんだ。僕達のことをよく知らない人が何か書けと言われてその事をとりあげるのは不思議じゃない。表面だけをみて、ミュージシャンにレッテルを貼るのは簡単なことだ。 ----なるほど、そういえば、ハリー・シャピロは彼の著書『A-Z of Rock Drummers』の中で君の詞の多くを「ファシスト」と決めつけているね。 ニール: 僕は政治的な詞を書いた覚えはない。政治に興味があるところといえば、思想の根本的原理だけだね。そういえば、アイン・ランドもファシストって言われたね。 ----そうなると君のアルバムやコンサートを聴く人にも理想の姿みたいなものを求めているわけ? ニール: アルバムを買ってくれたらヘッドフォンをして、歌詞カードをにらみつけて1語1語、1音1音理解しようとする。それが理想の姿、恐らくそんな人はいないだろうけど。でも、そうしようと努めてくれる人はいて、僕たちもそういう人のためにやってるんだ。 ----ところで、影響を受けたミュージシャンにキース・ムーン、マイケル・ジャイルス、ビル・ブラッフォードの名前があるけど彼らに実際に会ったことは? ニール: いや、自分が本当にアイドルだと思う人達には誰とも会ったことがないんだ。 ----もし、彼らに会ってじっくり話をする機会があったとしたらどんなことを聞いてみたい?やはり、楽器の話かな? ニール: たぶん聞かないと思うよ。普段一緒にやってる人、例えばツアーに同行しているバンドのドラマーとならそんな話もするだろうけど、ドラマーってそういう同族意識があるみたいだから。だけど彼らのような尊敬している人に会えたら、本とか映画といった共通の話題をみつけて語り合うんじゃないかな。彼らはドラムスの話なんかもうあきあきしてるよ。機械なんかあまりに日常的で、もう皿洗い機と同じだよ。それにスタイルの一部じゃなく単なる表現手段なんだ。自分の中に持っているヴィジョンを表現するのにふさわしい機械を選ぶわけ。だからどんな機械を使っているのかというより、どんなヴィジョンで組み立てて、何を表現するかが大事なんだ。もちろんドラムスという物体自体面白いし、新しい製品の情報を仕入れたりはしてるけど、それだけじゃどうにもならないってこと。 ----機材の話だが、タマのアートスターの設計時に君のことが話題になったそうだけど。 ニール: そもそもライヴ・アルバムのミキシングをしてた時、空き時間がやたら長かったんだ。ちょうどスタジオにハイマンの古いセットがころがっていたんで、キレイに掃除してヘッド換えて叩いてみたら凄くいい音が出たんだ。ピュアなトーンでね。何曲かデモ・テープを録ってみたけど素晴らしかった。 ----アートスターを使うようになってスタジオでのマイク・テクニックは変わった? ニール: いや、スタジオではすべてのアングルをカヴァーするようにしている。クロス・マイキングの他に各種のアンビエント・マイキングもしてるよ。ミキシングではそれをいろいろ組み合わせるんだ。 ----ルーム・マイクだけというのはやった? ニール: 特殊効果に使ったことはある。ドラムスだけのパートでセットから30フィートくらい離したマイク1本で録った。凄いアンビエント・サウンドで単独で使うには素晴らしい音だったけど他の楽器とうまくブレンドするのは不可能な音だったね。 ----ところで、今でもスリンガーランドのウッド・スネアは使っているの? ニール: 使ってるよ。2番目にグレードの高いやつ。中古品を60ドルで買ったんだけどとても満足している。メタルのスネアで何もかも気に入るってことはなかったんだ。で、初めて手に入れたウッド・スネアがこれなんだ。でも、これがこんなに素晴らしいなら最高機種はもっと凄いはずだと思ったけど、そうでもないんだ。1台1台音に特徴があってソフトな音だけがいいとか、大きな音に合うとかでなかなか全部カヴァーできていない。おそらく前の持ち主の改造が良かったんだと思うよ。スネアが張ってあるところのエッジが切りとられててスネアがのびのびと鳴る。張りが均等でなくなるから、下のヘッドにはいい迷惑だけどね。 ----シモンズも使っているようだけど。 ニール: うん、だけど生ドラムとすっかり入れ替える気にはなれなかったから2つのセットを使い分けることにしたんだ。つまり、今までのセットがひとつあって、クルッとうしろを向くと18”のバス・ドラムとスネアやシンバル、そしてシモンズのタムを組み合わせたセットがあるってわけ。ただ、シモンズにも限界があるわけで、タッチをコントロールできると言ったって、その場で3連符をひとつひとつ違う音色にしたりはできない。ただ2つのまったく違うセットがあるのはとてもいいことには違いない。18”のバス・ドラムは凄くパンチのある音が出る。それしか出ないけど、この音は他のバス・ドラムでは出せないんだ。24”の方は全体をソツなくカヴァーするしね。それに今までとは違ったフィルなんかも思いつくんだ。しかも、ごく基本的なセットだから、基本に返るのにもいいしね。何度も同じ曲をやって、いきづまったりしたら向きを変えてやるとまた新鮮なプレイができるんだ。 ----ステージでヘッド・フォンを使っているけど何か理由があるの? ニール: 基本的にはアルペジエーターで鳴らしてるシーケンサーやシンセサイザーを聴くためなんだよ。これは、クリック・トラックでトリガーされてるんだ。『シグナルズ』の中の「恐怖兵器」なんかそうだね。これは人間が機械に合わせなきゃなんないんだ。そこで僕がしっかり聴いて、皆は僕に合わせる、ということになってるんだ。 ----今度はテクニックについて聞きたいんだけど、バス・ドラム・ペダルを踏むときは、かかとをつけてる?つま先だけ? ニール: つま先だけだよ。いろんなものを使ってて全部そばに置いときたい。バス・ドラムもすぐ近く、ヒザの真下にある。これで重心をしっかりかけるんだ。たいていの場合、モモじゃなく、お尻から動かすけど早くて細かいところでは足首を使うね。これは手首も同じだ。大きな音を腕全体で出すけど早くて微妙なところは手首をきかせるんだ。 ----話は変わるけど、「失われた夢」はヘミングウェイのことを歌っているのかい? ニール: よくわかったね。 ----あれは君自身の先行きへの不安でもあるわけ? ニール: もちろん。でも、最初に言った通り、僕にはドラムスの他にも目指すものがある。あの歌の中では2つの道が示されていて、1つはダンサー、つまりは肉体的な破滅。2つめは作家、こちらは精神的な破滅だ。本当はミュージシャンについて深くつっこんだ内容にするつもりだったんだ。たとえばボブ・マーリーのように自分ではどうすることもできない病気で死んでいった人とか、キース・ムーンみたいに自分で破滅していった人とか‥‥‥。 ----「失われた夢」に描かれたヘミングウェイの他にダンサーがいるけど実在のモデルはいるのかい? ニール: 特にいないけど、でも映画『愛と喝采の日々(The Turning Point)』でシャーリー・マクレーンとアン・バンクロフトが演じたバレエ・ダンサーにちょっとだけヒントを得たんだ。 ----話は変わるけど、MTV について意見を聞かせてくれないか? ニール: ある種のバンドにとっては表現手段が増したね。でも MTV もラジオと同じようにあまりにも型にはまってて売るためのコツがすぐにのみこめてしまう。音楽は音楽だけで充分なんだ。聴く方が曲や詞から思い思いのイメージを映画のように思い浮かべていく。僕達も映画を作るみたいに、まずテーマを決め、その背景を作って‥‥‥という風に曲を作ったことがある。でも音楽は音楽以外の何者でもないんだ。他のものと組み合わせることはできるけど、いいレコードに代わるものは他にない。イメージ的な画像を入れたビデオを作る時でも演奏シーンは必ず入れてバランスをとるようにしているんだ。 ----最後に、メンバーを増やそうとしたことはあるかい? ニール: あるよ、でもこれだけ3人の関係がうまくいってて責任を分担してる時、新しい人を入れてそれが壊れたらイヤだしね。それに僕達をみて、トリオなのにあんなに色々な事をやってる、と思ってくれる人も多いことは事実だし、それは誇りだと思っているんだ。 |
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